筋肉の疲労について

 

筋肉を繰り返し収縮すると張力が低下することはよく知られています。これを筋疲労といいます。

 

脳からの指令を神経の電気的な興奮を介して筋線維に伝えることで力が発揮されます。このような一連の流れを興奮収縮連関といいます。神経と筋力発揮の情報に関してはこちらで神経系

 

筋力低下の要因は、興奮収縮連関の過程での機能不全であり、運動の強度や種類によって疲労の要因は異なります。

筋疲労の現象は明らかになっているものの、筋力トレーニングではどの要因によって疲労するのかという点においては、未だに議論されており明らかになっていません。

 

今回は、筋力トレーニングで考えられる疲労の要因について紹介させていただきます。

 

1)中枢(脳)神経

最大の筋力発揮を多回数(〜100 orそれ以上 )繰り返すと中枢神経系の活動が低下することが報告されています。

 

2)運動神経細胞

脊髄から筋肉までを繋ぐ神経を運動神経といいます。こちらも最大努力で繰り返し運動を行うと、運動神経細胞の興奮性の低下によってインパルスの発火頻度が約2/3に低下します。

 

3)神経・筋接合部

神経と筋肉の間にはわずかに隙間があり、神経から伝達された興奮が接合部に到達すると化学物質(アセチルコリン)として放出して筋の膜に伝えられます。

強度の高い運動を行うと、アセチルコリンを介した伝達機能が低下してしまいます。

 

4)水素イオン(H+)

レップ数を重ねると乳酸が産出されます。産出された乳酸は、乳酸イオンと水素イオン(H+)に分離されます。乳酸イオン自体には、収縮活動に影響を与えません。しかしH+は、増加に伴って張力発揮や短縮速度を低下させてしまうことが報告されています。乳酸発生によるパンプアップによって、力が入らなくなる感覚は、実は乳酸イオンではなくH+のせいなのです。

 

5)無機リン酸(Pi)

強度の高い運動を行うと筋細胞内のPiの濃度が高くなります。Piは、筋収縮を左右するCa+と結合しやすく、これがCa+の放出を妨げてしまい十分に筋肉を収縮できなくしてしまいます。

 

6)筋鞘およびT管

神経・筋接合部から放出されたアセチルコリンが筋鞘(筋の膜)に伝達されると、再びインパルスが発生して筋線維の内部へ情報を伝えます。

繰り返し収縮を行うことで、筋鞘から筋線維の内部へ入るまでのインパルスの伝導機能が低下してしまいます。

 

7)活性酸素種(ROS)

激しい運動を行うとROSの生成速度が高まり、抗酸化能力を上回ると濃度はどんどん上昇してします。ROSは、筋原線維や筋小胞体など収縮に必要なタンパクを酸化させてしまいます。

 

 

90%1RM(4RM)のような高強度の筋力トレーニングを行った場合に生じる疲労は、一般的に(1)〜(3)といわれています。

80%1RM(10RM)のような中強度の筋力トレーニングでは、一般的に(4)〜(6)といわれています。

(7)に関しては、多くの回数をこなすほどROSは産生されますのですべての運動に関与します。

 

などなど、様々な要因が混ざり合って筋疲労が生じます。

 

このように強度が異なるだけで疲労の要因も異なります。

 

様々な重量でトレーニングを行うことによって、適応はそれぞれ異なるはずですので、

私の個人的な意見としては幅広い重量で行うことをオススメします。

 

引用:入門運動生理学  勝田 茂 編著  /  和田 正信 著  /  松永 智 著