オーバーリーチングで1RMを飛躍的に向上させる

 

今回紹介する文献は、戦略的にオーバーリーチング(一時的な1RMの低下)を生じさせてベンチプレスやスクワットの1RMを増加させた研究だ。この研究の目的は、アミノ酸を摂取することで運動パフォーマンスや血液指標にどのような影響を及ぼすかについて検討したものであるが、今回はトレーニングプロトコルに着目して紹介する。

オーバーリーチング・・・オーバートレーニングの手前のことで一時的にパフォーマンスの低下が起きたことを示す。

 

まず結果から言おう。

どちらも4週間のオーバーリーチングをさせたトレーニングで、

アミノ酸摂取群:ベンチプレス 108.6±17.6kg → 116.7±17.8kg 

                      スクワット    130.8±33.5kg → 142.0±36.0kg

プラセボ摂取群: ベンチプレス 110.5±15.6kg → 116.8±17.1kg

                       スクワット    135.1±20.4kg → 143.0±21.5kg

トレーニング経験者が、1ヶ月のトレーニングでベンチプレスが約5〜6kg、スクワットで約10kgほど増加することは非常に難しいことはお分かりのはずだ。さらに、体重は増えていない。まさに、"マッスル クオリティー" の極みである。そのトレーニングプロトコルを明らかにしよう。

方法

この実験は17人のトレーニング経験者で行い、アミノ酸摂取群とプラセボ(偽物)群の2群に振り分けた。アミノ酸摂取群には、1日に0.4g/kg摂取させ、プラセボ群にはセルロース(炭水化物)を摂取させた。

 

プロトコルは2つのフェーズにわけて行う。

1~2週目:8つのエクササイズを8~12回 3セットずつ行う。月〜木まで連続で行い、土日はオフ。

3~4週目:5つのエクササイズを3~5回 5セットずつ行う。月〜木まで連続で行い、土日はオフ。

 

このプロトコルは、4日連続で行って疲労を蓄積させることでオーバーリーチングを引き起こしている。そしてテーパリングとして、週ごとにトレーニングボリュームを落として、筋を回復させていくことでオーバーリーチングからのリバウンド効果を狙いパフォーマンスを最大限に引き上げる。

結果

1RMは上記のとおりであり、どちらも増加したが群間では有意差はなかった。また、アミノ酸摂取群はトレーニング1週間目に起こる一時的なパフォーマンスの減少(オーバーリーチング)を抑えることができた。

 

考察

オーバーリーチングは昔からウエイトリフティングで実際に使われていた手法だ。中強度でボリュームを増やす→高強度でボリュームを減らしていく、という過程で行われる。下図のように一時的にパフォーマンスを低下させることで飛躍的なパフォーマンスのリバウンド効果が生まれるといわれている。しかし、そのメカニズムについては明らかになっていない。

 

この実験では、ベンチプレスが100kg以上持てるような経験者が大幅に記録を更新している。しかもたった4週間だけである。このプロトコルは、ある一定の運動強度に耐えられる経験者にオススメと考えられるが、個人の疲労耐性に応じてボリュームを適切に変えてあげることでパフォーマンスが改善し、オーバートレーニングも未然に防ぐことができるはずだ。

 

・普段のトレーニングでプラトーになっている人は、刺激を変えてみるのも良いだろう。

・試合前のピーキングを組む人には、より重たい重量を持てるように、ピークを試合に合わせられるように取り入れてみるのも良いであろう。

 

このプロトコルは、オーバートレーニングと常に隣り合わせであり、言わば「諸刃の剣」ではあるが、試してみる価値は大いにあるはずだ。

 

P.S 

次はアミノ酸に関しての紹介をさせていただきます。

ちなみに、筆者は試合前のピーキングで去年の世界クラシックパワーからオーバーリーチングを使用しており手応えを感じています。後ほど、現場の上級テクニックのところでデータと一緒に載せていきます。パワーリフティングの現場でよく言われるエブリデイベンチに近い現象だと思います。

 

William J. Kraemer, Nicholas A. Ratamess, Jeff S. Volek, Keijo H7kkinen, Martyn R. Rubin, Duncan N. French, Ana L. Go ́mez, Michael R. McGuigan, Timothy P. Scheett, Robert U. Newton, Barry A. Spiering,Mikel Izquierdo, Francesco S. Dioguardi. The effects of amino acid supplementation on hormonal responses to resistance training overreaching. Metabolism Clinical and Experimental 55 (2006) 282–291