高頻度トレーニングで重量を伸ばす!?

 

パワーリフティング競技では、”エブリディベンチプレス”といった週5〜6日程度の高頻度トレーニングを実施する選手が多数存在する。競技者の中には、フォームの安定や改善に良いという声もある。

しかし経験的に有効であるとされているが、科学的には明らかになっていない。

ベンチプレスといった多関節動作では、様々な筋が互いに協調して連動する。

パワーリフターを対象にしたベンチプレスの研究(トップリフターのベンチプレスを科学的にみる)では、バーベル挙上時の筋の連動性が個人個人で異なることを報告している。つまり、上級者は長年の経験を経て、自分の身体的特徴や筋の構造に合うようなフォームに調整しているみたいだ。

また、実際に世界のトップリフターが、同階級のまま挙上重量を年々伸ばしている。トップ選手においてもフォームを磨くことに上限は無いように感じる。

 

このように、フォームの改善は挙上重量の増加につながることが予想されるが、果たして“エブリディベンチプレス”のように高頻度でトレーニングを実施することはフォームの改善に有効的なのだろうか。

そこで今回は、マウスに対して運動学習の効果に着目した研究を紹介し、フォームの改善に有効的なトレーニング方法について考察する。

 

方法

動物は動くものを無意識に目で追う習性があり、繰り返し学習することで眼球をより大きく動かすことができる。これを利用して、マウスに1時間の眼球運動をさせる条件で揃え、以下の群に分類して学習効果を比較をした

集中学習群 : 1時間継続して眼球運動を実施した

分散学習群 : 15分の眼球運動をそれぞれ30分、1時間、24時間の休憩をとって計4実施するグループと、7.5分の眼球運動を24時間の休憩をとって8回実施したグループに分けた

 

 

結果

両群計1時間の学習後、どちらも同程度の学習効果を示した。

しかし24時間後、集中学習によって得られた効果は、半分に減少してしまった。

分散学習によって得られた効果では、24時間を超えても維持されていた。

つまり、一括で行うよりも分割にして行う方が運動学習の効果が続くのである。

 

集中学習で得られる記憶は、小脳皮質のプルキンエ細胞で形成され短期的な記憶になる。しかし、分散学習ではその先の小脳核で形成されるため、長期的な記憶になるみたいだ。

 

 

著者の考察

運動学習の効果的な方法は、集中学習よりも分散学習であることが本研究からわかった。

学習効果を長く保つためには、適度に間隔を空けながら頻度を高く行うことが重要なのである。

 

このことから、トレーニング現場で実施されている高頻度トレーニング(エブリディベンチ)の方が従来の理想的なトレーニング頻度(週2〜3回)よりも学習効果の獲得に有効的ではないかと考えられる。

1週間に18セットのベンチプレスを実施する条件で揃えた場合、

週2回 (9セット/日)の頻度で実施するよりも、週6日(3セット/日)の頻度で実施した方がベンチプレスのフォームが改善されて、挙上重量が増加するかもしれない。

 

もちろん、このようなプロトコルで実験をした研究はないので仮説に過ぎない。

しかし、パワーリフティングの現場では、実際にエブリディベンチを実施している選手が多く、高頻度で実施することによる有効性は現象論としてもあらわれている。

 

筋力を伸ばすアプローチとして、ガツガツ高頻度でやってみるのはいかがだろうか。

 

Okamoto, T., Endo, S., Shirao, T. & Nagao, S. Role of cerebellar cortical protein synthesis in transfer of memory trace of cerebellum-dependent motor learning. J. Neurosci. 31, 8958–8966 (2011).