[スクワット] 裸足とランニングシューズの違い

論文レビュー

はじめに

近年、スクワットやデッドリフトといったパワーリフティングエクササイズを裸足で行うトレーニーが増加している。

 シューズメーカーでは、裸足の感覚を強調するため裸足のような靴も開発しているようだ。

 人気のあるサイトでは、裸足で行うトレーニングは足の筋力と全体のスタビリティ(安定性)の改善に関して有利であり得ることを提唱している。[1]  [2]

 しかし、裸足で行うトレーニングを支持する客観的なデータは存在しない。

 そこで本研究はバーベルスクワットの運動力学を、ランニングシューズ着用時と裸足時で比較し、裸足時での利点について評価することを目的とした。

方法

被験者

5-7年のレジスタンストレーニング経験がある25名(男性20名、女性5名)

試技

60%1RMのバックスクワット(ハイバーでパラレルスクワット)

ランニングシューズ着用時と裸足時でそれぞれ試技を行い、各部位の変位を評価した

測定内容

足関節、膝関節、股関節の角度

胴体、大腿、脛のセグメント角度

結果

最大下降時の胴体、大腿、脛のセグメント角度と膝関節の角度で有意差が認められた。

裸足時ではランニングシューズ着用時と比較して、

わかりやすくまとめると、以下の4点が明らかになった。

  • 胴体が前傾した
  • しゃがみが浅くなった
  • 脛がより垂直に立った
  • 膝関節の屈曲が少なかった(曲げる幅が少なかった)

考察

裸足でのスクワットは2つのデメリット(①と②)と2つのメリット(③と④)の結果をもたらす

①胴体が前傾した

・先行研究から胴体が前傾することにより、脊柱の下部や股関節のトルクが増大することが報告されている。

・また、高度に熟練したリフターの方が熟練度の低いリフターよりも胴体がより垂直な状態でスクワットをしていたことも報告されている。

  2点のことから、スクワットで胴体が前傾することは理想的ではないかもしれない。

②しゃがみが浅くなった

本研究では、スクワットの深さを一定にしたのにも関わらず、大腿のセグメント角度が裸足条件で大きくなってしまった(しゃがみが浅くなってしまった)。

これは、裸足条件の方が大腿を地面と平行にするまで下降することが困難であることが考えられる。

③脛がより垂直に立った

 バックスクワットをする際には、脛を可能な限り垂直に近づけることがNSCAのガイドラインより推奨されている。

 ランニングシューズの方が裸足よりも約3度かかとが高く、脛のセグメント角度の差(約3度)を説明するのは、このかかとの高さの差異である可能性が高い。

④膝関節の屈曲が小さかった

膝関節の屈曲が小さいほど、膝関節力と関節トルクの大きさに関連することがいくつかの先行研究で報告されている。

したがって、裸足時の方が屈曲が小さいため、発揮する膝関節の力、トルクの点において有利であるかもしれない。

まとめ

裸足でスクワットを行うと、胴体が前傾してしゃがみが浅くなりやすくなるが、膝が前に出にくくなり膝関節の屈曲も抑えられるので強い膝伸展力を発揮しやすくなるかもしれない。

筆者の考察

パワーリフティング競技でいうと、

かかとを高くしたい人はウエイトリフティングシューズ。

裸足の感覚に近づけたい人はたび履を選んでいるのではないでしょうか。

 裸足でも無理なくしゃがめる方は、デメリットの部分が排除されるので裸足orかかとの薄いシューズを履いた方が良いかもしれませんね。

 逆にしゃがみにくい人は、腰痛のリスクなどを考慮するとかかとの高いシューズを選ぶ方が良いかもしれません。

 ハーフスクワットやクォータースクワットでは、裸足でも無理なくしゃがめるのではないでしょうか。

 人によって骨格の長さや柔軟性なども異なるので(過去の記事)、しゃがみ易さに関してはそれぞれ異なります。今後、それらの特徴も加味した研究が出ると面白いですね。

Sato, K., Fortenbaugh, D., & Hydock, D. S. (2012). Kinematic Changes Using Weightlifting Shoes on Barbell Back Squat. Journal of Strenght and Conditioning Research, 26(1), 28-33. Doi: 10.1519/JSC.0b013e318218dd64 

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