筋力の原理

基礎知識

筋肉はどのような仕組みで力を発揮しているのでしょう。筋力トレーニングにおいて筋力を高めることは筋肥大を最大化するために必要ですし、ベンチプレスの挙上重量の向上に繋がります。仕組みがわかれば戦略的にトレーニングメニューを組むことも可能です。そのようなことを知りたい方はぜひこの記事をお読みください。

筋肉はどうやって収縮されるのか?

あなたが腕を曲げる時、

「腕を曲げる!」という脳からの指令がインパルス(電気信号)によって伝えられ、脊髄を介して運動神経にまで伝達されて上腕二頭筋が収縮することで腕が曲がります。

このように、筋は神経によって支配されているので、神経の興奮によって筋の発揮筋力が決まります。

脳から脊髄までの神経を「中枢神経」と呼び、脊髄から筋肉までの神経を「運動神経」と呼びます。

運動神経は、中枢からのインパルスによって神経自身が強く興奮したり、弱く興奮したりすることはありません。

中枢からのインパルスの強さによって興奮するかの閾値は運動神経ごとに決まっており、

その強さを下回れば全く興奮せず、超えれば全力で興奮します。

実は、運動神経は興奮するか否かの二択であり、これを「全か無かの法則」といいます

力発揮の原理

筋繊維が興奮するか否かの閾値は細胞体のサイズで決められており、

遅筋線維はサイズが小さくて閾値も低く、速筋線維ほどサイズが大きくて閾値も高くなります(サイズの原理)。

小さい力を発揮する時は中枢からのインパルスは低く、大きい力を発揮する時はより強いインパルスが出ます。

つまり、中枢(脳)からのインパルスが強ければ強いほど多くの筋線維が動員されていくメカニズムとなっています。

身の回りで身体が小さいにも関わらず力がめちゃくちゃ強い人ってたまにいませんか?

実際に①筋断面積で貼付した福永ら(1978)の研究でも、下の図のように赤丸で囲ったような外れ値を示す人がいます。

なぜ、このような現象が起きるのでしょうか?

下の図は、全力で力発揮した時の一般人とトレーニング者とを比較したものです。

このように同じ筋肉の太さでも収縮する筋線維の数に違いがあれば力の出力も違います。

これは先ほど述べたように、中枢のインパルスの強さが主な要因でトレーニング者の方が中枢のインパルスが強く、運動単位が動員されたからということです。

トレーニングで得られる筋力増加の要因

筋力トレーニングで得られる筋力増加の要因は主に4つ挙げられます。

  1. 運動単位の動員・同期化
  2. 発火頻度の増加
  3. 共収縮の抑制
  4. 腱紡錘の機能低減

1.運動単位の動員・同期化

上述で述べたとおり、筋力トレーニングを行うことで動員される筋線維が多くなり強い力発揮をすることが可能になります。また、その動作を繰り返し行い学習することで、それぞれの運動単位が効率良く動員されるようになります。

2.発火頻度の増加

 運動単位が一度だけ発火して起こる単収縮では発揮される力は弱いが、発火頻度が高く単収縮が加重されると発揮される力は大きくなります。個々の運動単位の発火頻度が上昇することで、筋全体の発揮する力が増大します。

3.共収縮の抑制

 例えば、重りを持って腕を曲げようとする動作は上腕二頭筋が収縮しますが上腕三頭筋も少なからず収縮します。これは本能的に関節を剛性高めるために拮抗筋が収縮してしまう反応ですが、同じ筋力トレーニングを繰り返し行うことでこの共収縮が低減し、発揮される力も増大します。

4.腱紡錘の機能低減

 腱紡錘とは腱内に存在し、腱の張力を感知するセンサーとなっています。筋肉が収縮するとその隣にある腱は伸張され、怪我を防止するために脊髄へ収縮を抑制するように指令を出します。筋力トレーニングを繰り返し行うことで腱紡錘の機能が低減され強い力発揮をすることができます。

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