はじめに
自分の筋肉は速筋線維の比率が多いのか、それとも遅筋線維が多いのか、一度は気になったことがあるはずだ。筋線維組成で述べたように、比率は遺伝的要因によって決められ、速筋線維は収縮速度が速く、遅筋線維は疲労耐性が強いという特徴がある。
自身の筋線維組成の比率を知ることによって、どの競技種目が適性かどうかについてある程度推測できるはずだ。
正確な筋線維の比率を調べるには、注射針のようなもので筋を取り出して調べることができる(ニードルバイオプシー法)。しかし、外科的手術のためできる人間は限られており容易に現場で測定することは難しい。
そこで今回紹介する勝田ら(1989)の研究では、ニードルバイオプシー法と50m/12分間走との関係について調べており、フィールドテストで筋線維組成を推定できる方法を紹介する。
方法
(1) ニードルバイオプシー法によって、外側広筋から筋を採取して速筋と遅筋の%比率を算出する
(2) 50m走タイムと12分間走の距離を測定する
結果
50m/秒と12分間走/秒から外側広筋の速筋の%areaを推定する場合、
その推定式は、Y=-59.8+69.8X (決定係数=76.7% p<0.05)となった。
Y=速筋線維の比率,
X=(50m走の速度/12分間走の速度)
例えば、50mが7秒、12分間走が2800mだったとする。それぞれ秒速は、7.14m/秒(50m÷7秒)、3.89m/秒(2800÷720秒)で、50m走の速度/12分間走の速度比は、X=7.14/3.89となる。
Y=-59.8+69.8×(7.14/3.89)
Y=68.31..
よって、この人物の速筋線維の分布比率は68%と推定される。
この実験のリミテーションとして、男子大学生で行ったものであり、女性や子供に対して同じ結果が出るかはわからない。
また、被験者には必ず全力で行ってもらうことが必須なので、他人に実施させる場合は心理的要因をしっかりとコントロールする必要がある。
勝田 茂, 高松 薫, 田中 守, 小泉 順子, 久野 譜也, 田淵 健一(1989) 50m走と12分間走の成績による外側広筋の筋線維組成の推定 , 34:141-149
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